サイゼリヤでイタリアを語る男
こんばんは。
まえだこむぎ です。
今日は、昔遭遇した男の話。
ある冬の夜、21時ごろ。ロードサイド店舗が立ち並び、都市部でもないが田舎ってほどでもない、郊外というには車がないと不便な街。
わたしは仕事終わりの母と、夜ご飯を食べにサイゼリヤに来ていた。
夜の遅い時間帯ということもあり、お客さんの数はまばら。夜ご飯を食べに来た家族、友人とゴシップ合戦中の主婦、勉強そっちのけでスマホを眺める学生。静かではないがうるさすぎもしない、心地良くガヤガヤした店内。
わたしたちは注文を終え、ドリンクバーへ飲み物を取りに行った。そんなころ”そいつ”はやって来た。
どことなく古いヤンキーのようなギャルのような、少し熟したお年頃のカップルだ。私の目にはそう映っているが、お互いの目には安室奈美恵とTERUのように映っているのだろう。それくらいいちゃいちゃベタベタしていた。
この二人、声がまあまあデカい。店中の注目の的だ。
当人たちは周りなど気にすることはなく「えー、全然お腹すいてないんだよねー」なんて言いながら メニューを机の真ん中に置き選び始めた。もうその時点でこちらのモヤモヤが増幅し始めていた。
すると男の方が急にフゴフゴと鼻の穴を広げながら大きな声で語り出す。
「本場のイタリア料理食ったことある?東京で食った高級なイタリアン、ぜんぜんちげぇからwww」
帰れ。サイゼリヤとサイゼリヤを愛するものに土下座した上で今すぐ帰れ。
そしてなにより、その声のボリュームと鼻の穴の大きさで本場と言うくらいなら、イタリアに行った経験であってくれ。
まだ何も食べていないのに胃もたれし始めた頃、二人はドリンクバーとマルゲリータを頼んだ。
その後も、二人はずっと中身のないイタリアトークを永遠と繰り広げている。
そうこうするうちに やつらのマルゲリータが届けられた。すると男が言う・・・
薄ッwwwせんべリータじゃんwww
せんべリータが店内に響く。
女の方には引くほどウケている。もう大ウケ。
それに反して店内の空気は止まり、持ってきたカプチーノがジェラートになりそうなほど冷え切った。
だがその彼に教えてあげたい。
本場のピッツァ、もっと薄いぞ、と。
本場は"紙リータ"だぞ、と。
そんな心配をよそに、やつらはクチャクチャとマルゲリータを平らげ、イチャイチャしたのちに退店した。
店内に戻る静けさ。
ドッと押し寄せる疲労。
リラックスしに行ったのに、帰宅する頃には満身創痍だった。
だがもうこの日以降、マルゲリータを見るたびに『せんべリータ』が脳裏をよぎるようになってしまった。もはや呪いだ。最悪だ。
そんな呪いを他の人にもお裾分けしたかったので、今日はこの男を紹介させてもらいました。えへへ。
とどけ、せんべリータの呪い。
20230820KOMUGI
(20230808にnoteへ投稿したものと同じ内容です)